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研究者・技術者なら読むべき!「奇跡のリンゴ『絶対不可能』を覆した農家」

映画にもなり、以前から話題になっていた本書が、4月のセールで253円になっていたので買ってみました(2014/04/18時点)。

にこやかな男性(木村さん)の笑顔、「農家」という言葉から、一見科学とは関係なさそうな本に見えます。

しかし、実際に読み進めていくと、この木村さんが生まれながらの研究者であることがわかってきました。

それがよく分かったシーンがこちらです。

「それで、実験を始めたわけ、コメの栽培も一年に一回しか試せないから、お酒のワンカップあるでしょう、あの空き瓶を酒屋からたくさん貰って来て実験したのな。

ワンカップを200個ぐらい並べて、それぞれに田圃の土を入れてな、土をどう耕して、どういう代掻き(しろかき)をして、どんな生育条件を与えれば、稲の育ちが良くなるかを比較したわけだ。」
via 奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録
※強調表示はHamaによるもの

さらには、一度の結果では満足せず、3回は同じ実験を繰り返すという徹底ぶり。この人は正に農家というよりは研究者だと思います。

研究者・技術者ならグッとくるであろうフレーズがたくさん

さらに、研究者や技術者ならグッとくるであろう言葉や文章がいくつもあります。

ここで自分が諦めたら、もう誰もそれをやろうとはしないだろう。自分が諦めるということは、人類が諦めるということなのだと思った。
via 奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録

これはかなりグッと来ましたね。私もまだ人類が達成できていない研究テーマに取り組んでいる研究者ですから、この言葉は本当に響きます。

パイオニアは孤独だ。何か新しいこと、人類にとっての本当の意味で革新的なことを成し遂げた人は、昔からみんな孤独だった。それは既成概念を打ち壊すということだから。
via 奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録

人は変化を嫌います。ですから、全く異質の考え方ややり方をすれば、周囲から拒否を受けるのは当然のことです。

木村さんもそうでした。約10年をかけて無農薬りんごが収穫できるようになるまで、周囲の農家から全く理解を得られず、ひどい言われようでした(しかも田舎ですから、このような状態は都会での生活と違って致命的です)。

木村が「バカになればいい」と言ったのは、そのことだ。
(中略)
何かをなすためには、経験や知識を積み重ねる必要がある。だから経験や知識のない人を、世の中ではバカという。けれど人が真に新しい何かに挑むとき、最大の壁になるのはしばしばその経験や知識なのだ。
via 奇跡のリンゴ 「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録

研究者として、「最大の壁になるのはしばしばその経験や知識なのだ」という言葉の意味には覚えがあります。

私も10年以上研究をしてきていますが、全く未知の現象と遭遇した場合は、自分の経験から導き出した仮説が誤りであったことは何度もありました。

知識や経験は必要ですが、時にはそれを一旦横に置いて、目の前の現象を見つめるということを忘れないようにしたいと思います。

まとめ

今困難なテーマに取り組んでいる研究者、技術者の方であれば、きっと力をもらえる本だと思います。

誰もやったことがないことに取り組んでいる人という意味では、新しいサービスの開発者や、経営者の方にも響くのではないでしょうか?

本当におすすめの一冊です!

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